紅茶の歴史 〜もとは中国の緑茶。これがどう変化して紅茶になったの?
お茶のルーツは中国。 その歴史は古く、はっきりした記録は乏しいのですが、4世紀ごろには茶の栽培が始まっていたようです。 もちろん、それは緑茶。 紅茶も、ルーツは中国のお茶です。 今回は、中国の緑茶がどのようにヨーロッパに伝わり、イギリスなどで愛される紅茶なったのかをご紹介します。
1.17世紀、いよいよお茶がヨーロッパに伝わる
2.イギリスで、お茶が大流行
3.お茶が体にいいことを知っていたイギリス人
4.イギリスで緑茶が流行らなかったのは、日本ほど軟水ではなかったから?
5.19世紀、インドで新種の茶樹を発見!
6.まとめ
1.17世紀、いよいよお茶がヨーロッパに伝わる
中国では緑茶や、少し発酵させて飲むウーロン茶などが一般的ですが、なぜかヨーロッパでは紅茶一択、というかんじですよね。 当時は船で2か月くらいかけて運んでいたので、ヨーロッパに着く頃にはすっかり発酵して紅茶になっていた、なんて説もあるのですが、詳しい記録は定かではないようです。
ヨーロッパにお茶が伝わったのは、17世紀。
当時、海上貿易で覇権を握っていたオランダの東インド会社によってもたらされました。
一説によると、このとき東インド会社が扱ったのは、中国では等級が低いとされた黒っぽい緑茶の茶葉、「武夷茶」だったといわれています。
いまでいうところのウーロン茶系の、半発酵に近い状態の茶葉だったようなのですが、硬度の高い水が出るヨーロッパではむしろ喜んで迎えられ、お茶は人気商品になりました。
ヨーロッパの販売業者が買い手の嗜好に合わせ、試行錯誤して発酵を進めるうちに、紅茶が誕生したともいわれています。
2.イギリスで、お茶が大流行
お茶が最初に到着したヨーロッパのは、ポルトガルでした。 ポルトガルは16世紀にはもう中国と交流があり、マカオに居住地を持っていたのです。 しかし、17世紀に国力がおとろえ、変わって隆盛してきたオランダの東インド会社がインドのみならず中国や日本との貿易を活発に行っていきます。
お茶をはじめとするアジアからの輸入品は、一旦オランダのアムステルダムに陸揚げされ、そこからヨーロッパ各地に運ばれました。 そのうちイギリスだけがお茶が広く受け入れられていくのですが、その背景には、水の問題があったのです。
みなさんもご存知の通り、ヨーロッパ大陸の多くの地域はミネラル多めの硬水。 もちろん、軟水を飲めるエリアもいくつかありますが、多くの地域で出る水は硬水なのです。 しかし、島国であるイギリスは、ヨーロッパでも比較的、軟水が出る地域が多かったことから、紅茶が広く復旧したと言われています。
なお、硬水で紅茶を淹れるとどうなるのでしょう。 硬水の場合、紅茶の成分のタンニンが水分中のマグネシウム、カルシウムと結合しだし、紅茶はまるでコーヒーのように黒く濁ってしまうのです。 こうなると紅茶が持つ、あの香りや味が失われてしまいます。 こうした硬水が出るヨーロッパの国々では、コーヒーの方が好まれ、紅茶は、香りや味を追加したフレーバーティとして飲まれることが多いようです。
日本も、軟水が出ますよね。 紅茶も緑茶もおいしく飲めるのは、軟水が出るおかげなんですね。
3.お茶が体にいいことを知っていたイギリス人
紅茶に適した軟水が出るイギリス。 紅茶が流行した背景には、肉や乳製品など脂質の多い食事をしたあとに飲むと、さっぱりさせてくれる効果がある点です。 発酵食品であるお茶には、タンパク質や脂肪の消化を促進する作用があるのです。 冬の季節が長いヨーロッパでは、寒さに耐えるため、肉や乳製品などの脂質の多い食材をつかったメニューが一般的です。 紅茶は、そうした食生活とうまくマッチした、というわけですね。 なお、ヨーロッパで広く飲まれているワインも発酵食品であり、ワインに含まれるポリフェノールが同じ効果を持っています。 ワインを飲む習慣があったことが、紅茶が広く受け入れられた要因のひとつなのは間違いないでしょう。
4.イギリスで緑茶が流行らなかったのは、
日本ほど軟水ではなかったから?
紅茶がすっかり定着しているイギリス。 でも、緑茶のイメージはありませんよね… イギリスで緑茶や半発酵のウーロン茶が受け入れられなかったのも、やはりその水質が関係しています。 ヨーロッパ大陸よりも硬度が低い水が出るイギリスですが、日本の軟水と比べると、やはり硬度は高め。 イギリスの水質では、完全発酵している紅茶には向いているのですが、半発酵のウーロン茶、不発酵の緑茶はお茶がもつ香りや味が、しっかり抽出されないのです。 逆に、紅茶を淹れるとまろやかでコクのある味がちょうどよく抽出され、苦みは出ません。 さらにミルクや砂糖を加えることで、よりおいしい飲み物として定着していったと考えられています。
そんなイギリスでも、最近は健康意識の高まりから、紅茶をストレートで飲んだり、緑茶や中国茶の人気も高まってきているそうです。 イギリスでおいしい緑茶が飲めるようになるのも、そう遠い未来ではないかもしれませんね。
5.お茶の呼び名 〜ティ、チャはどちらも語源が中国語
ヨーロッパではお茶のことを「ティー」や「テ」、「チャイ」などと言います。 実はこれらはもともと中国語。 広東語系ではお茶のことを「チャ」と言い、福建語系では「テー」と発音するのです。 お茶を船で輸入していたイギリス、フランス、スペインなどの西ヨーロッパ側では、船の出発地が福建省あたりだったことから、お茶のことを福建語にならって「ティー」や「テ」などとと発音するようになったと言われています。 一方、広東語系の言語を話すエリアから陸路でお茶が運ばれていった国々では、お茶のことを広東語にならって「チャ」と発音するというわけです。 ロシアはヨーロッパですが、日本語の「チャ」に近い「チャイ」と発音します。 これは、シベリアに住むアジア系の住民を通してお茶が伝わったため、と言われています。 他に、チベットやモンゴル、インドやトルコでも、お茶のことを「チャ」や「チャイ」などと呼んでいます。
6.19世紀、インドで新種の茶樹を発見!
さて、17世紀にヨーロッパにもたらされたお茶は中国産ですが、その200年後、ついにインドのアッサム地方でイギリス人の冒険家ブルースによってインドオリジナルの茶樹が発見されます。 調査の結果、中国の茶樹とは別の種類とわかるのですが、その後このアッサム種と中国種の茶樹の交配をすすめ、インドを中心にバングラディシュ、そしてスリランカでお茶の栽培が盛んになっていきます。 中国のお茶は中国人によって栽培、販売が行われていましたが、インドの方はイギリス主導で大規模農法と合理的な加工法を採用して大量生産。 やがて紅茶の世界市場では、中国産よりもインド紅茶の方が主流となっていきます。
19世紀後半にはオランダも負けじとインドネシアで紅茶のプランテーションを開発。 20世紀、第二次第千後はアフリカ諸国でも紅茶の栽培が開始され、特にケニアは、現在世界有数の紅茶生産国のひとつとなっています。
7.まとめ
もとは中国で緑茶として愛飲されていたお茶が、ヨーロッパで紅茶となった歴史を振り返ってまいりました。 東インド会社が当時輸入していたお茶は、半発酵の茶葉でした。 硬水が出るヨーロッパでは、不発酵の緑茶より、茶葉を発酵させて作る紅茶の方が人気が出て、ヨーロッパ大陸の中では硬度が低い水が出るイギリスで特に愛飲されるようになりました。 奥が深い紅茶の歴史。 毎日のティータイムで、話題にするのもよいかもしれませんね。カテゴリーから探す
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